産業立地の基本:企業はどのように事業の場所を選ぶのか?

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 企業がどこに拠点を置くかは、その成功を左右する重要な要素です。産業立地とは、企業の生産活動やサービス提供を行うための最適な場所を選ぶプロセスを指します。この記事では、ウェーバークリスタラーといった著名な研究者の理論を紹介しながら、企業が立地を決定する際の要因や、業種ごとの特性について解説していきます。産業立地の基本から理論まで、企業の立地戦略を理解するためのヒントをお届けします

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1. 産業立地のとはなにか

1.1. 産業立地の定義

 産業立地とは、企業が生産活動を行うために選択する地理的な場所や位置のことを指します。企業が立地を選ぶ際には、輸送コスト、労働力の質と量、原材料の入手可能性、市場へのアクセス、インフラ、政府の政策や規制など、さまざまな要因が影響を与えます。適切な産業立地は、企業の生産効率や競争力に直接影響し、地域経済の発展にもつながります。近年は、デジタル化やグローバル化により、従来の立地要因だけでなく、通信インフラや人材ネットワークも重要になっています。

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1.2. 産業立地の理論

 20世紀に入り鉄鋼業や自動車産業などの工場がどんどん建設されることにより、産業立地に関する理論がドイツアメリカの研究者を中心にまとめられるようになっていきました。以下に主な産業立地の理論を紹介します。

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① アルフレッド・ウェーバーの工業立地論

 アルフレッド・ウェーバー(Alfred Weber)は、1909年に発表した「工業立地理論」で、企業の立地選定における輸送コスト、労働力コスト、集積のメリットを基礎とする理論を提唱しました。この理論は、特に製造業の立地に焦点を当てています。

輸送コスト: 製品や原材料の輸送コストが企業の立地決定において最も重要な要因であると考えます。企業は、輸送コストを最小化できる場所、すなわち市場や原材料の供給地に近い場所を選ぶべきだと主張しています。

労働力コスト: 安価な労働力を得るために、労働力コストが低い地域に立地することも考慮されます。

集積のメリット: 他の企業と集積することで、情報の共有や共同でのインフラ利用、サプライチェーンの効率化が期待でき、集積によるコスト削減が可能です。

 ウェーバーは、工場の立地場所を原材料、動力、市場の輸送コストの合計が最も安くなるところに立地するとの理論を導き出しました。

1 ウェーバーの工業立地の考え方

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② クリスタラーの中心地理論

 ヴァルター・クリスタラー(Walter Christaller)は、1933年に「中心地理論」(Central Place Theory)を提唱しました。この理論は、主に商業施設やサービスが都市や地域にどのように配置されるのかを説明するためのモデルです。

中心地の概念: クリスタラーは、都市が「中心地」として機能し、その周囲に小規模な町や村が位置するとしました。中心地は、広域の需要を満たすための商業施設やサービスが集中する場所であり、交通のハブとしても機能します。

階層構造: 中心地には階層構造があり、最も上位には大都市が位置し、より多くの高級サービスや専門的な商品を提供します。下位の中心地には、日常的な商品やサービスを提供する小規模な商業施設が集中します。

市場範囲: クリスタラーは、特定のサービスや商品が提供される範囲(市場範囲)を六角形で表し、効率的な空間配置を提案しました。

図2 クラスタラーの中心地理論の概念図

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③ ホテリングの競争的立地モデル

 ハロルド・ホテリング(Harold Hotelling)は、1929年に「競争的立地理論」(Hotelling’s Model of Spatial Competition)を提唱しました。この理論は、競合する企業がどのようにして市場における立地を決定するかを説明します。

競争と集積: ホテリングのモデルでは、企業は競争相手から顧客を奪うために、できるだけ市場の中心に立地しようとします。たとえば、2つのアイスクリーム屋が長いビーチの両端にある場合、彼らは顧客を奪い合うために次第にビーチの中央に近づき、最終的に隣り合って立地することが予想されます。

消費者の選好と価格競争: このモデルは、消費者が最も近い店舗を選ぶことを前提とし、企業が競合相手と近接することで、競争が激化する状況を説明しています。また、消費者は価格だけでなく、アクセスのしやすさも考慮して選択を行います。

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④ アウグスト・レシュの地域経済理論

 アウグスト・レシュ(August Lösch)は、1940年に「地域経済理論」(Lösch’s Location Theory)を提唱しました。レシュの理論は、クリスタラーの中心地理論を発展させたもので、企業が利益を最大化できる立地をどのように選ぶかを説明しています。

利益最大化の立地: レシュは、企業が輸送コストと市場へのアクセスを考慮し、利益を最大化できる場所に立地するべきだと述べています。市場の広がり(需要)と輸送コストの関係から、企業がどのエリアに立地すれば最も利益が出るかを分析します。

市場範囲と独占領域: レシュは、企業がどの程度の市場を独占できるかを分析し、これを基に企業の立地決定を説明しました。市場範囲が広いほど、他の企業からの競争を避け、より大きな利益を得られる可能性があります。

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⑤ プレドの行動的立地理論

 行動的立地理論(Behavioral Location Theory)は、1960年代から1970年代にかけて、経済地理学者であるアラン・プレド(Allan Pred)によって提唱されました。この理論は、企業が必ずしも利益最大化や効率だけでなく、経営者の個人的な判断や主観的な要素に基づいて立地を決定することを説明するものです。

限られた情報と不確実性: アラン・プレドは、企業がしばしば完全な情報を持たない状態で立地を選ぶため、不確実性を伴うと指摘しました。このため、経営者の直感や経験が重要な役割を果たすことが強調されています。

満足化戦略: 行動的立地理論では、企業が「利益の最大化」ではなく、一定の基準を満たす「満足する」立地を選ぶことが多いとされています。プレドは、現実世界における立地選択は、理論的な最適立地とは異なり、実際的な選択が行われることを示しました。

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表1 主な産業立地に関する理論

 工業立地論中心地理論競争的立地モデル地域経済理論行動的立地理論
提唱者アルフレッド・ウェーバーヴァルター・クリスタラーハロルド・ホットリングアウグスト・レシュアラン・プレド
提唱時期1909年1933年1931年1940年1960年代~1970年代
主な特徴・内容企業の立地は輸送コスト、労働力コスト、集積効果によって決定される。都市やサービスは階層的に配置され、一定の範囲で中心地が分布する。企業は競合相手との距離顧客の配置を考慮しながら、自社の立地を決定する。経済活動の空間的分布を説明し、地域がどのように発展するかを分析する。経営者の主観や経験、情報の限界を考慮し、必ずしも利益最大化ではない立地選択を行う。
前提条件・仮定コスト最小化を重視、企業は効率的に利益を最大化しようとする。均等な平面、同一の交通条件と均一な需要を仮定。直線市場、均一な消費者の分布、価格競争を前提とする。消費者の行動や企業の立地選択により、経済活動が一定のパターンで広がることを仮定。不完全な情報、不確実性、経営者の判断や満足化を前提とする。
主な違い立地選択の際、コスト最小化に焦点を当て、利益最大化を前提とする古典的な理論。サービスの提供や都市の配置に焦点を当て、特定の産業ではなく、全体の中心性を重視。競争相手との関係性を重視し、立地選択における戦略的行動を考慮する理論。中心地理論を発展させ、経済活動の広がりと均衡パターンを明らかにした。企業が合理的な行動を必ずしも取らないことを前提とし、現実的な立地選択を強調。

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2. 産業立地の決定要因

 2.1. 立地の要因

 実際に企業や事業所が立地を決定する際には、さまざまな要因が考慮されます。これらの要因は業種やビジネスモデルによって異なりますが、一般的には次のような主要な要素が判断材料となります。

① コスト要因

 立地選定において最も重要な要素の一つはコストです。これには、土地の購入・賃貸費用、建設費用、人件費、運営コストが含まれます。

土地・建物の価格: 企業は、事業所の規模に応じた適切な土地や建物を探し、その地域での価格や賃貸料を比較します。都市部は一般的に土地や建物のコストが高いため、コストを抑えるために郊外や地方を選ぶ企業もあります。

人件費: 労働力の供給が豊富な地域では、人件費が抑えられる可能性があり、企業にとって大きなコスト削減要因となります。特に製造業やサービス業など、労働集約的な産業では、人件費が立地選定に大きく影響します。

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② 原材料へのアクセス

 企業にとって製造プロセスに必要な原材料へのアクセスは、効率的な生産活動において重要な要素です。原材料への近接性は、調達コストの削減や生産効率の向上に直接影響を与えます。

原材料の近接性: 製造業においては、主要な原材料の産地に近い場所に拠点を置くことで、原材料の安定供給を確保し、調達コストを削減することができます。例えば、鉄鋼業は鉄鉱石の産地に、食品加工業は農産物の生産地に近い場所を選ぶ傾向があります。

物流と輸送コスト: 原材料の調達における輸送コストも重要です。例えば、港湾や鉄道といった物流インフラが整った場所に拠点を構えることで、原材料の輸送コストを削減し、迅速な調達が可能になります。

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③ 市場へのアクセス

 企業は製品やサービスを提供する市場に近い場所を選ぶことが重要です。市場への近接性は、顧客への迅速なサービス提供や物流コストの削減に直結します。

顧客への近接性: 小売業やサービス業では、顧客が多い都市や商業集積地に近い場所が好まれます。これにより、集客力が向上し、売上の拡大が見込まれます。

物流と輸送コスト: 製造業や販売業においては、製品を市場に運ぶ際の輸送コストが重要です。例えば、港湾や空港、鉄道などの交通インフラが整った場所に事業所を構えることで、輸送コストの削減や配送のスピードアップが可能です。

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④ 労働力へのアクセス

 適切な労働力の確保も企業の立地決定において非常に重要な要因です。労働者が集まりやすい場所、あるいは特定のスキルを持つ労働力が豊富な地域を選ぶことは、事業の成功に直結します。

専門技術やスキル: 特定の業種では、必要なスキルや知識を持つ労働者が多く存在する地域が有利です。例えば、ハイテク産業や研究開発部門では、大学や研究機関に近い場所に立地することが一般的です。

労働市場の規模: 労働集約型産業では、労働者の数が多く、賃金水準が比較的低い地域が選ばれる傾向にあります。これにより、コスト削減を実現しながら、必要な人材を確保できます。

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⑤ インフラの整備

 交通、通信、エネルギー、物流などのインフラは、企業活動の効率を大きく左右します。特に、次のようなインフラの充実は、企業の立地決定において重要な要因です。

交通インフラ: 製品の輸送や顧客のアクセスに重要な影響を与える交通インフラ(道路、鉄道、港湾、空港)が整備されている場所は、企業にとって魅力的です。特に、物流コストの削減が期待できるため、製造業や貿易業では重要視されます。

通信インフラ: IT企業やサービス業では、通信インフラが整備されている場所が好まれます。デジタル経済が進む現代では、特に高速インターネットやクラウドサービスが利用しやすい地域が有利です。

エネルギー供給: エネルギー集約型の産業では、安定した電力供給がある地域が選ばれます。例えば、製造業や化学工業などは、大量の電力や水を必要とするため、これらのインフラが整備された地域が立地先として有利です。

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⑥ サプライチェーンの近接性

 製造業や加工業では、サプライヤーや部品メーカーが近い場所に立地することが重要です。これにより、原材料の調達や部品供給の効率を高め、コスト削減と生産スピードの向上が期待できます。

関連企業の集積: 同業者や関連業者が集積する地域では、近接することでサプライヤーとのコミュニケーションが円滑になり、急な需要変動にも迅速に対応できるため、生産効率や柔軟性が向上します。そのため、企業はそういった集積地に立地することで生産効率や競争力を向上させることができます。

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⑦ 法規制や税制の優遇措置

 企業が立地する地域において、政府や地方自治体から提供される税制優遇措置や補助金などのインセンティブも、立地選定に大きな影響を与えます。

税制優遇: 一部の地域では、企業誘致のために法人税の減税や土地購入の補助金、設備投資の補助などのインセンティブが提供されます。これにより、企業は立地コストを抑えられます。

規制の緩和: 特定の産業に対する規制が緩和されている地域や、自由貿易特区などの地域では、ビジネスが展開しやすくなるため、企業はそういった地域を選ぶことが多いです。

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⑧ 社会的・文化的要因

 企業の事業所立地に影響を与える要因として、その地域の社会的・文化的環境もあります。これは、特に企業のイメージや企業文化に影響を与えることがあります。

企業のブランドイメージ: 特定の業種では、ブランドイメージを強化するために、高級住宅街やビジネス街に立地することがあります。たとえば、高級ブランドの店舗が銀座や原宿などの都心部に集まるのは、その地域が持つ洗練されたイメージを活用するためです。

生活環境: 特にグローバル企業やハイテク企業は、社員の生活の質を重視します。良好な生活環境が整った地域は、優秀な人材を引きつけやすいため、住環境や教育機関が整っている都市部が選ばれることが多いです。

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⑨ 競争環境

 競合企業が近くに存在することで得られる利点も立地決定に影響を与えます。特に、以下のような理由で競合企業が多いエリアに立地することが考えられます。

知識と情報の共有: 競合企業が集まる地域では、最新の市場情報や技術の動向をキャッチしやすくなり、競争力を高めることができます。

市場の形成: 同業者が集まることで、その地域全体が特定の産業の市場として認知され、消費者や投資家を引き寄せる効果があります。

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 企業が立地を決定する際には、コスト、労働力、市場アクセス、インフラ、サプライチェーン、法的インセンティブなど、複数の要因が総合的に検討されます。企業のニーズや戦略によって、これらの要因の重要性は異なりますが、立地が企業の成功に大きく影響するため、慎重な検討が行われます。

 企業の立地決定には道理がありますが、時々経済的道理では説明できない立地判断もあります。創業者が故郷に錦を飾るためとかで、立地を決定することがあります。しかしそれがダメということではありません。僻地戦略は、従業員のモチベーションが高かったり、顧客を限定したり、他の戦略で穴埋めして勝負することがあります。

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2.2.  業種別立地特性

① 製造業

製造業の立地選定には、以下の要因が重視されます:

サプライチェーンへのアクセス: 製造業では、原材料や部品を調達するためのサプライヤーや部品メーカーが近くにあることが重要です。これにより、輸送コストを抑え、生産効率を高めることができます。

労働力: 特に製造業では、技術労働者や熟練工が集まる地域が好まれます。例えば、自動車産業では、特定の技能を持つ労働力が豊富な地域が重要な立地要因となります。

輸送インフラ: 製品の輸送において、道路や鉄道、港湾などの交通インフラが整備されている場所が好まれます。特に、グローバルな供給チェーンを持つ企業にとっては、空港や港湾の近くが重要です。

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 製造業の立地には、さまざまな要因が影響を与え、大きく分けると5つの指向型があります。

原料指向型は、製造に必要な原材料が重くかさばる場合に、輸送コストを抑えるために原材料の産地に近い場所を選ぶ立地です。例えば、鉄鋼業やセメント製造が該当します。

市場指向型は、製品を消費する市場に近い場所に立地するケースです。特に製品が重く輸送費が高い場合や、鮮度が重要な商品で見られます。飲料や食品加工業が代表例です。

労働力指向型は、安価で豊富な労働力を求めて立地するタイプです。特に労働集約型の産業で見られ、繊維産業や電子機器の組立などが典型です。

交通指向型は、製品や原材料の輸送がスムーズに行える場所を選ぶものです。港湾や高速道路の近くに立地することが多く、石油精製所や物流センターなどが該当します。

集積指向型は、他の企業や関連産業と集積することで、情報交換やコスト削減などのメリットを得る立地です。シリコンバレーのようなハイテク産業集積地が代表的です。

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表2 立地の5つの指向型

種類原料指向型市場指向型労働力指向型交通指向型集積指向型
特徴原料の輸送コストを最小限に抑えるために、原材料の供給源の近くに立地する産業。製品の輸送コストを抑えるため、市場の近くに立地する産業。特に製品が腐りやすい、またはかさばる場合に重要。豊富でスキルのある、または安価な労働力を持つ地域に立地する産業。効率的な輸送ネットワークに近い場所を優先する産業。商品の輸送コストを削減することが目的。他の企業と集積することで、共有サービス、インフラ、知識のスピルオーバーのメリットを享受する産業。
重視するポイント原材料への近接、原材料の輸送コストの削減。顧客への近接、製品の輸送コストの最小化、市場の需要への対応。労働力の利用可能性、労働力のコストとスキルレベル。輸送インフラへのアクセス、物流・配送コストの削減。サプライヤー、サポートサービス、インフラ、協力の可能性へのアクセス。
製鉄業、パルプ・製紙工場、セメント製造。飲料産業、パン製品、自動車組立工場。繊維産業、電子機器の組立、衣料製造。港湾近くの石油精製所、高速道路近くの物流センター。シリコンバレーのハイテク産業、ハリウッドの映画産業、デトロイトの自動車産業。

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② 農業・食品加工業

農業および食品加工業の立地選定には、次の要因が影響します:

自然条件: 農業においては、気候や土壌、降雨量などの自然条件が適した地域が選ばれます。たとえば、ワイン産業は気候が適しているボルドーやトスカーナなどの地域に集中しています。

市場への近接: 食品加工業では、生鮮食品の流通が速やかに行えるよう、消費市場への近接性が重要です。大都市近郊や交通の便が良い場所が選ばれることが多いです。

物流インフラ: 食品産業は鮮度が重視されるため、冷蔵・冷凍施設が整備されている物流インフラが整った地域が好まれます。

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③ ハイテク産業(IT・通信技術など)

ハイテク産業の立地選定には、以下の要因が重要です:

大学や研究機関との近接性: ハイテク産業では、研究開発が重要な要素となるため、大学や研究機関が多く集まる地域が好まれます。例えば、シリコンバレーではスタンフォード大学やバークレーなどの研究機関があり、産学連携が活発です。

技術労働力: 高度なスキルを持つエンジニアやプログラマーが多く集まる地域が重要です。これにより、必要な人材を確保しやすくなります。たとえば、IT企業はサンフランシスコやシアトル、ボストンなど技術系労働力が豊富な都市に立地する傾向があります。

通信インフラの整備: ハイテク産業では、高速インターネットやデータセンターの近接性が重要です。これにより、デジタル経済の中で迅速かつ安定したサービス提供が可能になります。

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④ 小売業

小売業の立地選定では、以下の要因が特に重視されます:

顧客アクセス: 小売業は、消費者に直接リーチすることが重要なため、人通りの多い商業エリアやショッピングモールの近くが好まれます。これにより、集客力が高まり、売上を最大化できます。

競合他社の近接: 小売業では、競合が近くにいることで「集積効果」が生じ、顧客が一か所で多くの店舗を訪れやすくなります。例えば、大型ショッピングモールや繁華街に出店することで、他店舗の顧客を自店にも引き込むことができます。

駐車場や交通アクセスの利便性: 特に郊外型の小売店では、顧客が車で来店できることが重要です。駐車場が充実しているか、公共交通機関へのアクセスが良い場所が好まれます。

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⑤ 金融業

金融業は、以下の要因に基づいて立地が選定されます:

金融センターへの近接性: 金融業は、他の金融機関やビジネスパートナーが集まる金融センターに近いことが重要です。例えば、ロンドンのシティやニューヨークのウォール街、香港の中環(セントラル)は、金融業の集積地として知られています。

法律および規制環境: 金融業は法的な規制や税制が大きく影響するため、金融取引に有利な規制が整っている地域が好まれます。自由貿易特区や金融規制が緩和されたエリアに拠点を設置することもあります。

高品質な通信インフラ: 金融取引は迅速な通信が必要であるため、通信インフラの整備状況が重要です。また、データセキュリティの観点からも、信頼性の高いITインフラが整った場所が選ばれます。

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⑥ 観光業

観光業では、以下の立地要因が重視されます:

観光資源の近接: 観光業は自然景観や歴史的な観光資源に依存するため、観光名所へのアクセスが良い場所が選ばれます。例えば、リゾートホテルや観光施設は、ビーチや山、文化遺産の近くに立地することが一般的です。

交通の利便性: 観光業にとって、空港や主要な観光地への交通アクセスの良さは大きな要因です。観光客が容易に訪れることができる場所は、観光施設やホテルの立地にとって魅力的です。

季節や気候条件: リゾート地やスキー場、温泉地など、気候条件が観光に直接影響を与える場合は、その地域の季節や気候を考慮して立地が選定されます。

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 このように、業種や産業によって立地選定における要因は大きく異なります。製造業ではサプライチェーンや労働力が重視され、ハイテク産業は知識や技術労働者との近接性を求め、小売業では顧客アクセスや集積効果が重要です。金融業は規制や金融センターの重要性が高いです。このように、各業種の特性に応じた立地要因を考慮して企業は最適な場所を選定します。

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参考文献

榎本 篤史、植井 陽大(2023)『図解 すごい立地戦略』PHP研究所

・「儲かる場所がわかる!」と帯にあるように商業出店の考え方について解説しています。

川端基夫(2013)『立地ウォーズ: 企業・地域の成長戦略と「場所のチカラ」』新評論

・大学の先生が書いているので、中心地理論などの理論もわかりやすく解説しています。場所のチカラについて考えたい人にはお薦めです。

松原宏(2013)『現代の立地論』古今書院

・立地論について学問的にしっかりと学びたい人には一番ぴったりかと思います。

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