北京の北西部に位置する中関村(Zhongguancun)は、今や「中国のシリコンバレー」として世界の注目を集めています。清華大学や北京大学などの名門大学が立地し、政府の強力な支援を受けて、レノボ、バイドゥ、シャオミ、バイトダンスといった世界的企業が次々と誕生しました。本ブログでは、中関村の成り立ちからその発展の歴史、主要企業の成功事例、産学連携の仕組み、そしてイノベーションエコシステムとしての中関村の魅力に迫ります。なぜ、どのように中関村が中国のテクノロジー産業の中心地となり得たのか、その秘密を探ってみましょう。
1. 中関村の概要と発展経緯
1.1 中関村の地域概要
中関村(Zhongguancun)は北京の中心部から北西に約12kmの北京市海淀区に位置するテクノロジー産業の中心地です。中国政府及び北京市政府は中関村にてIT産業を中心に、バイオ、新素材、航空・宇宙、ナノテク、環境産業の振興を行っています。清華大学、北京大学、中国科学院とはじめとする中国最大の知的人材の集積地であり、豊富な人材を活用し、積極的な産学連携による高度な研究開発・事業化を推進しています。同時に海外留学生の帰国を促し、技術や事業ノウハウの高度化を図っています。現在では、レノボやバイドゥをはじめ多くの企業が発展して「中国のシリコンバレー」とも呼ばれています。
図1 北京中関村の位置
1.2 中関村の成り立ちと歴史的背景
開発経緯
1980年、中国科学院物理研究所の陳春先教授は、アメリカ・ボストンのルート128やシリコンバレーを視察しました。この経験を活かし、帰国後に中関村で科学技術の商業化を目指す民間組織「北京等離子体学会先進発展技術服務部」を設立しました。これが中関村のハイテク産業の始まりです。
その後、1984年には中国科学院計算センターに勤務する万潤南が、中関村で「四通」を創業し、中国語ワープロの開発に成功しました。また同年、計算技術研究所の研究員11名が後のレノボにつながる「中国科学院計算所新技術発展公司」を設立し、中関村における技術開発の基盤を築きました。
1985年以降、政府は産学官の共同研究を積極的に促進し、科学技術を経済成長に結びつけるための制度改革を次々と実施しました。こうした取り組みが実を結び、1988年には中関村地区が中国初のハイテク産業開発区である「北京市新技術産業開発試験区」に指定されました(後に「中関村科技園区」として改称・拡大され、総面積は100平方キロメートルに及びます)。
続いて1991年には、北部の上地地区に情報産業開発区が設立され、さらなる拡大が図られました。1997年には南部の豊台区の一部と北部の昌平県の一部を含むエリアにまで用地が広がり、広域な「北京市新技術産業開発試験区」が確立されました。
1998年には海淀地域が設立され、翌年には「中関村科技園区建設促進申請書」が提出されました。これにより、中関村は上海浦東地区開発と並ぶ国家プロジェクトとしての地位を確立し、同時に北京電子城地域も新たに設立されました。
2000年には中国政府が「中関村科技園区」を正式に制定し、北京市戸籍の取得が可能となるほか、所得税や輸入関税の減免などの優遇措置も導入されました。こうして中関村は、ハイテク産業の拠点としてさらに発展する土台を整えることとなりました。
中関村における産学連携とハイテククラスターの形成
中関村は、テクノロジー産業の拠点として大学や研究機関と企業が密接に協力する「産学連携」の基盤が築かれました。北京大学や清華大学をはじめとするトップクラスの大学と多くの研究所が立地し、技術者や研究者が集まりやすい環境が整えられた結果、知識と人材の集積地としての役割を果たすことができました。中関村には小規模な技術系企業が次々と創業され、特にコンピューター技術の進化とともにIT関連企業が集まり、徐々にハイテク産業のクラスターが形成されていきました。この環境により、多くの企業が大手テクノロジー企業へと成長する土台が築かれていったのです。
1.2 中関村の成長を支えた政策と制度改革
政府の支援とインフラ整備
中関村の成長を後押しした大きな要因は、政府の支援策や制度改革です。中国政府は中関村を国家プロジェクトとして位置づけ、税制の優遇措置や研究開発費の補助金、インフラ整備の支援など、多くの優遇政策を打ち出しました。また、産学官の協力体制も整備され、技術開発と実用化が進み、多くの企業が競争力ある製品を市場に送り出すエコシステムが形成されました。
1980年代以降、中国は科学技術振興を重視し、「中関村科技園区計画」などの政策を打ち出しました。この計画のもと、中関村には研究施設やテクノロジーパーク、商業施設が建設され、企業が活動しやすい物理的基盤が整いました。また、国際的な企業の進出を支援する環境も整備され、外資系企業や合弁企業の増加が中関村の発展をさらに促しました。
人材の集積とインフラの充実による成長支援
中関村にはもともと、北京大学や清華大学をはじめ中国科学院の研究所があり、優秀な研究者の集積がありました。また中関村の成長には、海外留学生の帰国を奨励する政策も重要な役割を果たしました。留学生が中関村で起業する際に、住宅やインキュベーター施設の優遇が提供され、高度な技術者が集まる環境が整備されました。
2. 中関村の主要企業と技術革新
中国企業の成長は著しく、かつてのベンチャー企業が世界的な企業に成長しているものも多く見かけることができます。中関村発の主な企業としては、聯想集団(レノボ)、四通集団、方正集団、比特、清華同方、北新建設材料、中技貿易、中国サービス集団、有研株式、中信国安、大唐電信 、百度(バイデゥ)、紫光集団、小米科技(シャオミ)、滴適出行(DiDi)、北京字節跳動科技有限公司(バイトダンス、TikTok)などが挙げられます。
2.1 代表的企業の成長と事例
中関村は「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる一大テクノロジー拠点であり、ここから数多くのグローバル企業が誕生してきました。その中でも特に注目されるのが、レノボ、バイデゥ、シャオミ、バイトダンスといった企業です。
<レノボ>
レノボ(Lenovo:聯想集団)は、1984年に中国科学院計算技術研究所の研究員たちによって設立され、パソコンの製造を中心に事業を展開してきました。レノボの成長戦略の大きな転機は、2005年にIBMのPC部門を買収したことです。これにより、レノボはブランド(Think Pad)と工場を手に入れることができ、大規模な仕入れ・販売ネットワークを保有し、企業規模を迅速に拡大することができるようになりました。さらに、2011年、日本電気(NEC)のPC部門を子会社化し、2017年には、富士通のPC事業を子会社化することで、日本のPC市場におけるシェアを拡大しました。その結果、2022年には、レノボ、NEC、富士通の3社合計で日本のPC市場シェアは38.3%に達しています。
また、2014年には、Googleから携帯電話端末部門であるモトローラ・モビリティを買収し、モバイル分野における事業基盤を強化します。同じ年、IBMからサーバー事業を買収し、データセンターや企業向けサービスの分野でも存在感を増しました。これにより、レノボは世界的なIT企業としての地位を確立し、今では中国を代表するPCメーカーでありながら、北米やヨーロッパなどグローバル市場でも大きな影響力を持つ企業となっています。さらに、クラウドサービスなど新たな分野にも進出し、AIやIoT分野での革新にも積極的に取り組んでいます。
<バイドゥ>
バイデゥ(Baidu:百度)は、2000年に設立され、中国最大の検索エンジン企業として成長しました。Googleが中国市場で規制される中、バイデゥは検索エンジンのみならず、自動運転やAI(人工知能)技術の分野でも進化を遂げています。音声アシスタントや自動運転技術に取り組むバイデゥの事業は、既存の検索事業を超えて、AI先進企業として中国国内外での評価を高めています。中関村で成長したバイデゥは、技術革新の象徴として、AIとビッグデータ分野のリーダー的存在となっています。
<シャオミ>
シャオミ(Xiaom:小米技科)は、2010年に設立され、スマートフォンの製造から始まり、瞬く間に世界中に認知されるブランドとなりました。シャオミの成功の鍵は、高性能なスマートフォンを手頃な価格で提供し、多様な機能を備えたスマート家電製品を数多く開発している点です。現在、シャオミは「家電エコシステム」の構築にも注力しており、スマート家電やIoTデバイスを通じて、スマートホーム市場をリードする存在となっています。
<バイトダンス>
バイトダンス(ByteDance:北京字節跳動科技有限公司)は、2012年に設立され、動画共有アプリ「TikTok(中国国内ではDouyin)」を通じて世界的な影響力を持つようになりました。AIを活用したコンテンツ推薦システムによって、ユーザーごとの興味関心に合わせた動画が表示される仕組みが人気を集め、若者を中心に大きな支持を得ています。バイトダンスは、単なるエンターテインメント企業にとどまらず、AIを活用したアルゴリズムの開発で業界をリードし、エンターテインメントとテクノロジーを融合させた新しいビジネスモデルを築いています。
バイトダンスの成長には、バイドゥなどを退職した技術者のプールがあり人材獲得が容易であった点や、北京にはベンチャーキャピタルが集積しており、そこからの出資を受けやすくなったなどエコシステムの形成が大きな要因であると言えます。
これらの企業の成長は、中関村が持つイノベーション環境やサポート体制、そして高度な人材の供給があってこそ実現したものです。
2.2 外資企業との連携と国際的な技術交流
外資企業との連携による技術交流の活性化
中関村の特徴の一つは、外資企業との連携によって国際的な技術交流が活発に行われていることです。中関村に立地する外資系企業としては、IBM,マイクロソフト、アップル、インテル、ノキア、グーグルなどが挙げられます。これらの企業が中国企業や研究機関と協力してさまざまな技術交流を行っています。
たとえば、マイクロソフトは1998年に中関村に研究開発拠点「マイクロソフトリサーチアジア」を設立しました。バイトダンスの創業者である張一鳴もマイクロソフトの研究所で一時期働いていたことがあります。マイクロソフトは、中国市場向けのソフトウェアやサービスの開発に加えて、中国企業やスタートアップと連携し、AIやクラウドサービス分野で技術協力を進めています。1995年にIBMも中関村に研究所を開設し、その後、AI、ブロックチェーン、ビッグデータ分野で中国の企業や大学と共同研究を進め、企業の競争力向上に貢献しています。このような協力によって、外資企業と中国企業の間での技術共有やイノベーションが加速しています。
国際的な視点と技術力向上への影響
当初、外資系企業は中国技術者の人気の就職先で北京大学や清華大学を卒業した優秀な若者がマイクロソフトやIBMなどに就職しました。外資企業との連携は、中国企業や研究機関が国際的な最新技術に触れる機会を提供し、双方にとっての相乗効果を生み出しています。さらに、外資企業の進出は中関村に国際的な視点や最新技術をもたらし、地元企業がグローバルスタンダードを意識するきっかけとなり、技術移転やグローバルな人材交流を通じて中関村全体の技術力向上を促進すると同時に中国のITの技術基盤を確立していきました。
2.3 研究機関と産学連携
豊富な研究機関と高度な人材の集積
中関村には、北京大学、清華大学、中国人民大学、北京理工大学、北京技科大学、北京師範大学、北京情報工程学院、北京計算機学院、連合大電子工程学院などの中国を代表する40校の大学や専門学校が集まり、さらに研究機関が200箇所も存在しています。これにより、高度な人材と先端技術が集中し、50万人の研究者が中関村に集結しています。この豊富な人材と技術の集積が、企業の研究開発活動を促進し、中関村の技術革新を強力に支えています。
大学との連携と起業の重要性
中関村では、大学との密接な連携が成功の鍵となっています。中国の大学の教員や研究者は、自ら研究費を調達する必要があるため、起業活動に積極的です。教員や学生がベンチャー企業を設立して技術の商業化を推進し、新しい技術や製品が市場に投入されることで、イノベーションが活発化しています。
中関村のイノベーションを支えるもう一つの重要な柱が、研究機関や大学と企業との連携です。特に、清華大学や北京大学は、産学連携の中心的存在として活躍しています。清華大学と北京大学は、それぞれ国内外でトップクラスの研究実績を誇り、企業と協力して技術開発や新たな事業の創出に取り組んでいます。
<清華大学>
清華大学(創立1911年、QS世界大学ランキング25位:2024年)は産学連携および起業にとても熱心な大学です。清華大学は「大学与企業合作委員会」という組織を持っており、これはリエゾンからTLOまで大学のあらゆる産学連携を包括的に支援する役割を果たしています。また、大学自らが出資する清華企業集団(清華大学発ベンチャー企業群の持株会社)を持っています。さらに、1993年には中国政府の「科教興国」(科学技術と教育で国を興す)路線の一環として大学が独自にサイエンスパーク(清華科技園)を建設し、そこでは大学の知的財産をもとにしたインキュベーション活動が行われています。清華大学の成功例はモデル化され、清華大学は全国に科技園のブランチを展開しています。地方自治体と共同でビルを建設し、リサーチパークとして企業を誘致しています。これは、大学のネットワーク化や系列化の一環と見ることができます。
<北京大学>
北京大学(創立1898年、QS世界大学ランキング17位:2024年)もまた、中関村での産学連携を活発に展開しています。北京大学は中関村に高層オフィスビルを持ち、大学外の企業やベンチャービジネスを呼び込み技術移転を行なっています。北京大学の産学連携プロジェクトでは、医療技術やバイオテクノロジー、情報技術の分野での研究開発が進められており、企業と協力して製品やサービスの開発を行っています。大学と企業の共同研究や技術移転によって、研究成果が実際の製品やサービスとして世の中に出るまでの時間が短縮されることは、中関村の強みとなっています。
中国の大学が運営する「校弁(大学発ベンチャー)企業」の総収入のうち、北京大学と清華大学の経営する企業集団が3割以上を占めているとされています。
研究機関としては中国科学院の存在が大きいです。中関村をはじめ北京には、中国科学院電子学研究所、中国科学院計算技術研究所、中国科学院半導体研究所、中国科学院軟件研究所(軟件=ソフト)などの研究機関が立地しており、多くの研究者が働いています。
このような産学連携は、中関村の企業が持つ競争力を高めるだけでなく、地域全体の技術力向上にも寄与しています。企業は大学や研究機関と連携することで、最先端の研究成果を取り入れた製品やサービスを生み出すことができ、大学や研究機関側も実践的な知識やスキルを身につける場を学生・研究者に提供できるという双方にとってメリットのある関係が構築されています。
3. 中関村のイノベーションエコシステム
中関村は中国有数のイノベーションエコシステムへと発展を遂げました。その特徴について以下の点が指摘できます。
3.1 政府の役割と支援
中国政府の支援による中関村の発展
中関村が「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長した背景には、中国政府の強力な支援が欠かせません。1980年代から、中国政府は中関村を国家の技術革新の拠点として発展させるために様々な支援策を講じ、1988年には「北京市新技術産業開発実験区」に指定されることで本格的な支援が始まりました。特に、中関村に進出する企業には税制優遇措置や研究補助金が提供され、企業が新技術の開発に専念できるよう資金面でのサポートが行われました。また、外国資本の参入を促進するため、資本規制を緩和し、国際的な技術交流を支援する政策も打ち出されました。
国家プロジェクトとしての政府の強力な支援と投資
中国政府は中関村を「国家プロジェクト」として位置づけ、国家戦略の一環として優先的に支援する方針を掲げ、科学技術の発展とイノベーションを重視しています。テクノロジーパークの整備やビジネスインキュベーターの設立、技術開発支援センターの開設など、多様なサポート体制が整備され、企業や研究機関が創業・研究活動を行いやすい環境が整えられました。また、税制優遇、補助金、研究開発資金など多岐にわたる政策支援を提供することで、企業や研究機関は資金面での安心感を持ち、長期的な研究開発やイノベーションに専念できる環境が整っています。
さらに、北京市政府も大規模なインフラ整備や商業サービスの国際化を推進し、毎年多額の資金を投入しています。大型商業施設の設立や鉄道・道路網の拡充を計画しており、これが地域の経済活性化と国際競争力の強化に寄与しています。こうした政府主導の戦略的投資が、中関村を中国のテクノロジー産業の中心地へと押し上げる大きな要因となっています。
こうした包括的な支援策により、中関村は企業の技術開発と革新が生まれる一大拠点として発展し、今日の地位を確立するに至りました。
3.2 人材育成と海外帰国者の影響
海外帰国者の役割と中関村への影響
中関村の発展には、国内外で培われた高度なスキルを持つ人材の存在が不可欠であり、その中でも特に注目されるのが「海外帰国者」の影響です。多くの中国人留学生が欧米で教育を受け、学んだ知識と技術を持ち帰って中関村で活躍しています。2000年代には中国政府は、こうした人材の帰国を強力に促進するため、住居の提供や事業資金の援助、都市戸籍の優先取得、インキュベーター施設の優先利用などの優遇措置を行っています。帰国者たちは最新の技術や知識に加えて、海外での最新のビジネスのやり方や管理ノウハウを持ち帰り、中国国内の技術基盤・ビジネス基盤が強化されています。
帰国した人材は高い起業意欲を持ち、スタートアップ企業を設立し、活発なビジネス展開を行っています。米国でベンチャーキャピタルに勤務していたものが、中関村でベンチャーキャピタルを創業するなどして資本の蓄積も起こりました。国際的な視点やネットワークを持つ彼らが参入することで、中関村の技術水準と国際競争力が一層向上し、持続的な発展に貢献しています。帰国者がもたらす人的資源と知的資本が、中関村のイノベーションエコシステムをさらに強化しています。
人材育成政策と中関村の競争力向上
バイドゥの創業者李彦宏のように海外帰国者が起業した企業は検索エンジン分野で革新的なサービスを提供し、世界市場での存在感を強めています。2014年、元スタンフォード人工知能研究所所長でGoogleのAI研究のチームのリーダーも務めたアンドリュー・ングがバイドゥのチーフサイエンティストに就任しました。
また、中関村に集まる帰国者は他の企業や研究機関と連携し、地域全体のイノベーションを牽引しています。中国政府は「千人計画」などの人材育成政策を通じて、優秀な人材の確保と技術移転の促進を図り、中関村の新興企業の創業支援だけでなく、長期的な経済成長とイノベーションの基盤として機能させています。これらの政策は、中関村の競争力を支える大きな要因となっています。
3.3 地域インフラとアクセスの利便性
中関村の利便性とインフラ整備によるイノベーション促進
中関村がイノベーションエコシステムとして成功している重要な要素の一つは、整備されたインフラとアクセスの良さです。中関村は北京市の中心部からわずか約10キロメートルに位置し、交通の利便性が非常に高いエリアです。北京市内と周辺地域を結ぶ鉄道や高速道路、地下鉄のネットワークが発達しており、研究機関や企業間での交流がスムーズに行われています。また、通信インフラも充実しており、5Gなど最新の通信技術が導入され、企業や研究機関がデータのやり取りを迅速に行うことで、研究や開発のスピードが向上しています。
産学連携の強化と技術革新への影響
中関村には清華大学や北京大学、中国科学院といった高等教育機関や研究機関が近接しているため、産学連携が非常に盛んです。企業は大学や研究機関と直接連携し、共同研究を進めることで、技術や知識をビジネスに活用しやすい環境が整っています。また、大学の研究成果を活用することで、短期間で製品化やサービス化を実現することが可能です。こうしたインフラと地域の利便性は中関村の競争力を支え、他地域との差別化要素となっています。産学官の協力を基盤に、中関村は今後も国内外から企業や人材を引きつけ、技術革新の中心地として発展を続けるでしょう。
まとめ
清華大学や北京大学などのトップ大学との密接な産学連携は、技術革新と人材育成を促進し、企業の競争力を高めています。また、海外留学経験者の帰国を奨励する政策により、最新の知識と技術が持ち込まれ、イノベーションエコシステムが強化されました。
中関村の成功は、政府の戦略的支援、人材の質と量、国際的な視点、そして整備されたインフラとアクセスの良さが相互に作用した結果であり、これらの要素が結びついて地域のイノベーションと経済発展を推進しています。今後も中関村は、産学官の連携を基盤に、技術革新の中心地としてさらなる発展が期待されます。
図2 北京中関村の成功要因
参考文献
<書籍>
寧肯(2022)『中国シリコンバレーの先駆者たち』科学出版社東京
徐 方啓(2007)『柳傳志: 聯想をつくった男』ナカニシヤ出版
マシュー・ブレナン(2022)『なぜ、TikTokは世界一になれたのか?』かんき出版
<Web>